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  • 後編「羅刹女と惨酷メカ」4
    6  縛り上げられたパン焼き親方が、フリチンで地べたに正座している。銃や鈍器や刃物で武装した、反乱の虜囚女たちが十人くらいで取り囲んでいた。  それでも不敵に笑う。   「フハハ! 俺はゲリラだぞ、さあ殺せ! 大満足だ、我が人生に一片の悔いもない! おい、ミレーユ、良かったぞ! お前を最後にまた犯してやれて最高だった。生意気なガキどもも最後の教育で殴りつけてやったわ!」    理解不能な言い草に、女...
  • 後編「羅刹女と惨酷メカ」3
    4  パン焼き竃のすぐ傍のベンチ、五十半ば過ぎの初老の「パン焼き親方」は煙草に火をつけていた。ゆっくりと紫煙を吸い込み、吐き出し、くゆらせながら、これまでの人生を回想する。  遠く聞こえる喧騒から、「終わり」が来たことを漠然と察していた。未練はなかったが、郷愁のような気持ちで、死んだ愛娘のことを思い出していた。それに、今の助手の小娘との日常や白い裸体や表情。  もう人生に一片の悔いもない。   「親方...
  • 後編「羅刹女と惨酷メカ」2
    2  カプリコンの戦い方は、まるでボクサーのような、精密なものになっていた。大きく跳ねる、乱暴でアクロバティックな動作は影を潜めている。無人操縦ならばパイロットがいないから、どんな無茶な勢い任せでも良く、動きと体重をフル活用した力任せがかえって効率的だったのかもしれない。  パトラを乗せている今は、必要以上には体軸をあまりずらさず、最小限の動きで回避する。そうして両腕のナイフで突き刺し、切り刻んで...
  • 後編「羅刹女と惨酷メカ」1
    1  燃えさかっていくコカ畑に照らし出された夜。病的な快楽と力、幻影と錯乱をもたらす麻薬の毒煙がもうもうと立ち込める。  こんな場所で対峙しているのは人間ではなく、機械のロボットだからだろう。人間はもはや主役ではなく、付属物か構成部品か。操縦者本人たちの事情はともあれ、二体の巨人たちは戦時中から何十年も続く機械同士の殺し合いの続きと延長に立っている。  頭のない骸骨のような巨人がゆっくりと立ち上が...
  • 中編「怒れる村人たちの凄惨な祭り」2
    2  そのとき、狂ったような奇跡が起こった。  破れた腹から垂れ下がった臓物を押し分けて、一個の雄渾が鎌首をもたげたのだ。断末魔の興奮が男の生命の最後の足掻きに立ち上がったのだった。 「素敵っ!」  セラは有頂天に叫び、今度は縦一文字。  真っ二つになった蛇が破れた水風船のように垂れ下がり、赤い滴りに白濁が混じってボタボタ落ちる。  うっとりとした顔には、エクスタシーすら漂っている。小ぶりな肩や...