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まず瀬戸が手に入れたはコロッセオゲーム本店(マイルド派)のゲスト会員登録のための認証コードだった。正規会員になるにはまずゲスト登録しなければならず、一定条件を満たせば正規の固定客になれる。コロッセオの複合組織は会員資格に共通性があるため、マイルド派の固定客(正規会員)は条件次第でハードゲームにも関与できるシステムだ。
たとえ処理する対象が極悪人でも有力者や表向きの名士である場合、暗殺のような強引なやり方ではそのまま大騒乱になるだろうが、コロッセオゲームの決闘遊びで死んでしまったなら一応は「自己責任」で片が付く。
しかもどうやらマフィア主体のハードゲーム派と、本家本元のアングラ競技運営であるマイルド派の間でも対立があり、徐々に後者が浸食や圧迫されだしているらしい。そうなってしまえばコロッセオゲームにもはやアングラなグレーゾーンでの救済措置や富の還流システムとしての意義や価値はなくなり、ただの暗黒利権として社会への脅威と最悪の暗部でしかなくなってしまうだろう(しかもその利益が丸ごと反社会集団や犯罪テロ組織の資金源になり、政府当局からの裏での最低限の監視とコントロールすら困難になるわけで、警察などの政府当局や本来の運営当事者たちも最も危惧しているところだった)。
およそ一を聞いて十を知るではないが、コロッセオの事情の一端を知るにつけて、瀬戸の頭にも具体的な方針が浮かび上がった。こんな好条件のチャンスを利用しない手はないだろう。
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サーシャだって、ハードゲームを主に主催している集団のことはよく知っている。あいつらは「コロッセオゲームのシステムに模倣便乗した最悪のマフィア」で、ゲームというよりも残虐な見世物、そして参加者(大部分は強制された不幸な人間)を破壊したり殺すことを目的にしているのだ。
絞首縄をかけてポーカーをやらせて、負ける度に吊り上げて、どちらかが死ぬまでやらせる。裏の格闘試合などでも途中で適当に止めるようなことはせず、完全に破壊されたりあるいは相手を殺すところまでやる。酷いのになると面白半分に弓矢の的にしたり火の中になげこんで「何分で死ぬか視聴者クイズ」だの、麻薬を注射して犬と交尾させながらクイズをやらせてたり、戦争ゲームで二組の集団で刀や棍棒で全滅するまで戦わせるなんてのまである。もはやゲームと言える代物ですらない残虐な見世物ビジネスでしかない。
本来の運営主流のマイルド派と一応は協定や棲み分けが出来ているとはいえ、奴らのアングラ利権への貪欲さは留まることを知らないし、主導権の奪取や事業と業界そのものの独占を狙ってくることは予想されていた。
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だからそんな奴らと戦ってデスゲームをやるのは、サーシャにとってもかなりの恐怖でありリスクである。世間から見れば「お前も似たようなものだ」と言われるかもしれないが、悪意の次元が違うのである。
とうてい全くの無事で済むとは思えないし、最悪は死ぬかもしれない。たとえ首尾良く勝利しても気が狂っていたり損壊しているかもしれない。
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