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瀬戸は笑っていた。
廃校舎で旧型の猟銃を持った女と日本刀を持った男と鬼ごっこ隠れんぼしながら、愉悦の笑みが止まらなかった。
声を上げて笑う。
物音と気配に振り向いた夜叉のような女が発砲する。
瀬戸には弾丸は届かない。
身代わりの楯に、土手っ腹に穴が開いたのは、さっき瀬戸が椅子で脳振盪するまで殴りつけたカップルの日本刀男の方だった。意識朦朧としているところを(頭蓋骨にひびが入っていた)引っぱりこみ、弾除けにしたのだった。
「その鉛玉一発幾らだ? コイツの命や人生は百円とかの値打ちしかなかったってことだな」
「ああっ! そんな、ああっ!」
自分のしでかした過ちに、パニックになって絶叫する女。ヤクザの情婦で一緒に「愛の逃避行」の資金に組の麻薬を持ち逃げしようとして、ついに辿り着いた結末がこれであった。
しかし後悔は長くは続かない。
瀬戸が男から奪った日本刀を振りかざして襲いかかったからだ。
横一文字に切り裁いたのは、愚かな女の妊娠三カ月目の胎み腹であった。臓物が溢れるように流れ出し、絶ち裂かれた子宮からは羊水と蠢く胎児が転げ出ていた。
瀬戸は胎児を目敏く拾い上げて、瀕死の女の口に無理矢理詰め込んだ。そして楽しそうに言う。
「こんなクソろくでもない世の中に、ろくでもない親から生まれてこなくて済んで、本当に良かったでちゅねー。豚でも猿でも交尾すれば妊娠できるし、人間の赤ん坊なんてメスブタのクソとどう違うんだ? さあママのウンコに生まれ変わってきな!」
どのみちに女は瀕死の重傷だから、この上に消化も排泄も不可能だろうが、言葉の綾である。深い意味はなくて、絶望を与えてやれたら何でも良かった。
瀬戸は活き活きと顔を輝かせながら、這いずるように女を助けようとした射殺完了男の、暗くなりかけた目玉に日本刀を突き込む。後頭部まで貫通して、血塗られた切っ先が光りながら飛び出した。
「ハアハア」
極度の興奮状態でズボンを半分下ろし、瀕死の呻き青ざめた女を四つん這いにさせて尻を突き出させる。スカートにパンティを引きずり下ろして、膨れた剛直をねじ込んだ。末期の痙攣を伝える膣道の中で精液をぶちまける。
これまでのユキの存在のブレーキが外れて、残虐な破壊本能が全開になっている。美男子である上ある種のサイコパスはしばしば異様な魅力があるように見える、彼もあるいはその類だったのかも知れない。
「ああ汚れた! 馬鹿女がクソまで漏らしてやがって」
瀬戸は性衝動を晴らすと今度は突如として怒り狂い、日本刀を汚れた陰部から胃袋まで力任せに突き入れる。死んでいるかに見えた女が動物じみた断末魔を絞り出して息絶えた。
一仕事を終えた瀬戸は爽やかな笑顔で親指を立てていた(社会の窓のチャックを閉め忘れていたのはご愛敬である)。一片の悔いもない完全勝利だった。これならばハードゲーム派の運営たちも文句の付けようがなかっただろうし、「ルーキー」と認めざるを得ない。
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