二度目に捕まったときには、背中に蹴りを入れられて階段から転げ落ち、踊り場で捕まれて上の階まで小突かれながら引きずられた。逃げようとしてもがいたけれども無駄、二回ほど思い切り殴られるとそれだけで抵抗する気力が失せてしまった。
廊下ではなくて教室に引っ張り込まれ、足を狙って蹴ったり踏んだりされて、普通に歩くのが難しくなる。折れたかも知れない。
「なんでこんなことするの?」
「楽しいから。あと依頼で仕事すれば金にもなるからなー。まず服脱げよ、どうせとっくにノーパンなんだろ」
てっきり最初は犯されるのだとばかり思っていた。そしたら違った。考えが甘かった。
掃除箱からホウキを持ってきて、それを鞭のかわりに全裸のサキを叩きまくる。ときどき蹴り飛ばされもした。
「あんた、本当は日本人じゃないでしょ? コロッセオは基本的に日本人だけじゃないの?」
「何事にも例外はあるんだよ。私はこれでも日本人だけどね」
ニヤニヤ笑いながら、いきなり手首を踏み潰されて、サキは絶叫をほとばしらせた。
「いやだ、いやだ」
泣き呻くサキの胯間の裂け目を靴先で小突いてから、背中の腎臓の位置に衝撃が走る。かかと落としだった。
「そんなに泣くなよ。これでも手加減してるんだぜ、楽に殺したら面白くないからよ。ヒャハ」
ひとしきり笑ってから鬼は付け足した。
「ああ、俺は日本人だぜ? でもこいつは韓国のパクさんから教わったんだ。韓国人くらい残虐趣味や欺瞞と犯罪の才能に秀でた人種はいないから、俺は尊敬するよ。大学のときの知り合いで、一緒に在日のヤクザを襲ったりして面白かったぜ。本場の韓国人からしたら在日なんか逃げた落伍者みたいなもんだからな。在日のヤクザが韓国の娘を騙して売り飛ばしたりして、知り合いの娘が被害に遭ったって怒ってたっけな」
そして冷ややかな目で告げた。
「まあそういうわけだ、諦めろ。これまでやらかしてきたことからしても、お前は混血ハーフなんてお上品なもんじゃなくって、ただの交雑した牝ブタで出来損ないの泥肉人形なんだから、こんな目に遭って当たり前なんだよ。おーい、見てるか?」
鬼は監視カメラに笑顔でヒラヒラと手を振った。
そして思案顔して黒板のところからチョークを一掴み持ってきて、サキの目の前にバラバラと撒き落とした。
「食えよ」
サキは何か言おうとしたが口ごもり、素直に命令に従った。やはり恐怖が勝ったのだろう。
鬼は煙草をくゆらせながらそれを眺めていたが、短くなった吸い殻を尻に押しつける。ジュッと肉の焦げる音がしてサキは「ウウッ」と呻いた。
「ほら、脚開けよ」
サキは「犯されるのだ」と思って安堵した。こんな虐待行為よりはまだセックスの方が楽でいいと思ったからだ。どのみちに経験人数は手足の指だけでは数え切れないのだし。
だが違っていた。
されるがままに性器の膣と肛門に、何かの異物を手でグイッと詰め込まれる。
「なによ、これ?」
不安でいっぱいになりながら真意を探ろうとするサキ。そして鬼はライターを取り出した。
「え?」
手早く着火すると、サキの胯間から滝のような火花が吹き出し流れ出す。ロケット花火だ。
「ひっ! ヒイッ! アアッ」
サキはおびえた顔で驚きと熱さから苦悶に喘ぎ、断末魔のような悲嘆を散らす。
「綺麗じゃないか」
「やめて、もう止めて! お願いだから許して!」
やがて火花の奔流が衰えだして、サキが少しだけ安堵しかかったときに、本当の悲劇が訪れる。
唐突にパンッ!という破裂音が立て続けに二回起こる。花火が膣と肛門の中で爆発したのだった。
「ううっっ!」
もうサキの苦しみは言葉にすらならなかった。腹筋と大腿をピクピク痙攣させながら、転げ回ることもでくずにうごめいている。
鬼はそこでにわかにサキの乳房を口に含んで、そのままいきなり乳首を噛み千切って吐き出す。その激痛と心理ショックの弾みでサキはとうとう完全に正気を失ってヒステリックに狂乱し始める。
「し、死にたい! もう死なせて! 殺して! ひと思いに殺せよおおお!」
すると鬼は「待ってました」とばかりにサキを窓際まで支えて引きずっていき、がらりと開けて、つかんだ頭を押し出した。
「死にたいのか? 飛び降りるか、おいっ!」
「ひ! い、イヤー」
我に返ったサキは目を見開き、渾身の力で鬼の腕を振りほどいて、教室のほこりだらけの床に尻餅をつく。
「なんだ、死にたいんじゃなかったのか?」
「ゆ、ゆるして」
命乞いの何度目かの土下座であるが、無駄とわかっていてもやってしまう悲しさよ。「弱き者、汝は女なり」とシェイクスピアは言ったのだとか。
頭を蹴り上げられ、その勢いで仰向けにひっくり返される。腹部に体重をかけた渾身の踏み込みをされて、ショックと圧力のあまり、とうとうサキは肛門から直腸が裏返って飛び出してしまった。飛び散り撒き散らされた排泄物が大便臭を教室に漂わせる。制御のきかなくなった泌尿器からは、間歇泉のような噴水の飛沫が上がっていた。
鬼はパチパチと拍手した。
「汚えなあ。ひょっとしたら人工肛門になるんじゃないのか、ゲラゲラ」
そのとき、教室の入り口から声と気配がした。
サーシャだった。少し怒った顔をしている。
「間宮さん。いくら何でも、あなたはいつもやり過ぎだよ」
「そーなのかー、だったらサーシャちゃんがお相手してくれる?」
小馬鹿にするような戯けた態度には、彼の実力への自信があらわれているのだろうか。
鬼、間宮はいきなりピストルを抜いて発砲する。
狙いはサキの頭だ。何が起きたかもわからないうちにサキは、砕けた頭蓋骨から桜色の脳を飛び散らせて即死していた。
「これで良いんだろ?」
間宮は立ち去りながらすれ違いざまに、サーシャに囁いた。
「お嬢ちゃんの機嫌取るためなんだから、こんなもんで勘弁してやったんだ。この馬鹿女もあの世でお前に感謝するさ、気にするな」
一人残されたサーシャの膝は震えていた。彼女だって意見するのは怖かったのだ。
このサキという女は裏で児童誘拐や子供の人身売買(海外に売れるのだ)にも関与していて、間宮は完全に「やる気モード」だったから。訓練の練習ならまだしも、本気で戦って勝てるとは思えない。
社会の裏側は暗黒と怪物であふれているのだった。
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